フレイルの専門家によるフレイル予防コラム#002

健康長寿応援コラム、フレイル予防 ついでにはじめる新習慣

2023年に厚生労働省から出された健康日本21に第3次において、1日の歩数の推奨が、成人8000歩以上、65歳以上6000歩以上となりました。
歩くのが健康に良いのは常識になっていますが、なぜ一定歩数以上歩いた方が良いのでしょうか?
もちろん歩くことは有酸素運動であり、血圧を下げたり、血糖を下げたりすることで動脈硬化性疾患の予防につながります。それとともに重要なのは筋肉の衰えを予防することにつながるからです。

高齢になると筋肉の量が減少し、疲れやすくなったり、転倒しやすくなったりします。ある一定レベル以上に筋肉の量が減少し、筋力が低下すると転倒、骨折だけではなく、脳卒中や認知症のリスクも高くなると言われています。
従って、歩くことによって、筋肉の機能を維持することが期待されます。歩くことは人間にとって基本的な動作ですが、そのスピードが落ちるとその後の平均余命が短くなることが知られています。
すなわち、歩くスピードが速い人はより長く生きることができるというエビデンスがあります。

それでは、歩くだけで筋肉の機能は維持できるのでしょうか?
答えはノーです。確かに1日8000歩以上歩くことを続けていれば、そうでない人より筋肉の機能は維持されますが、より機能を保つ、または一旦落ちた機能を回復させようと思うと他の運動が必要となります。
それはどのような運動でしょうか?それがレジスタンス運動といわれるもの、すなわち筋トレです。
すなわち、歩くことに加えて、適切な頻度で筋トレをすることがもっとも筋肉の健康にとって効果があり、健康で長生きすることにつながるのです。

文・監修:荒井 秀典

国立長寿医療研究センター 理事長 荒井秀典(Hidenori Arai)

<略歴>国立長寿医療研究センター 理事長。日本老年学会 理事長。日本サルコペニア・フレイル学会 代表理事。J-MINT研究代表を務める。
著書/『フレイルのみかた』中外医学社出版、『40歳からの健康年表 (文春新書)』文藝春秋出版、『寝たきりにならずにすむ筋肉の鍛え方 かんたん体操&栄養知識でいつまでも歩けるカラダに!』河出書房新社出版 など他多数


自分の筋力を知ろう!

足の筋力セルフチェック

■筋肉どれくらい衰えてる?■
**ステップ1**
目を開いたまま片足立ちをしてみましょう。そのまま何秒キープできるか計ってみてください。
【診断結果】
●~5秒・・・サルコペニアの可能性大です
●15~30秒・・・60~70歳代の平均的な筋力です
●40~60秒・・・50~60歳代の平均的な筋力です。

**ステップ2**
10、20、30、40cm程度の高さのある台(椅子)を用意します。最初は40cmに座り、両腕を組んで両足を肩幅くらいに広げ、反動をつけずに立ち上がって、3秒キープしてみましょう。
◎テストの際の注意点◎
決して無理をしないよう気を付けてください。
立ち上がる際に痛みを生じる場合はすぐに中止し、医療機関に相談してください。
また反動をつけて立ち上がると転倒する恐れがあります。
【診断結果】
●40cmの台から立ち上がれない・・・サルコペニアの可能性大です。
●10cmの台から立ち上がれない・・・70歳代の平均的な筋力です。

■ステップ2が出来た方のみ進めてください■
**ステップ3**
40cmの台(椅子)に座り、左右っどちらかの足を軽く曲げたまま上げ、反動をつけずに立ち上がり、そのまま3秒キープしましょう。
【診断結果】
●40cmの台でどちらか一方の足で立ち上がれない・・・40歳代以上の筋力です。
●30cmの台で、どちらか一方の足で立ち上がれない。・・・30歳代以上の筋力です。
●20cmの台で、どちらか一方の足で立ち上がれない・・・20歳代以上の筋力です。

■ストレッチなど準備運動をしてからチャレンジしてください■
**ステップ4**
①スタートラインを決め、両足のつま先を合わせます。
2できるだけ大股で2歩歩き、両足をそろえます。(バランスを崩したら失敗とします)
③2歩分の歩幅(最初に立ったラインから着地点のつま先まで)を測ります。ジャンプはしないでください。
④2回行い、良かった方の記録を採用します。

◎テストの際の注意点◎
体力に自信のない方は介助者のもとで行いましょう。
無理せず、バランスを崩さない範囲で行いましょう。
滑りにくい床で行いましょう。

【ステップの算出方法】
2歩幅(cm)÷伸長(cm)=2ステップ値
【診断結果】
●2ステップ値が1.3以上・・・まだまだ大丈夫!
●2ステップ幅が1.3未満・・・筋力低下がはじまっています
●2ステップ値が1.1未満・・・かなり筋力が低下しています

■注意点■
☑本企画は、専門家の監修のもと編集をしていますが、実践して体調悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。
☑このコーナーでご紹介するのは、あくまでセルフチェックです。痛みや違和感がある場合は、自己判断せずお近くの専門医にご相談ください。

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